2017年12月22日

小説の金曜日 第一章③ 赤い壁の上を

 高校生のタケシ、思いがけないことが起きるのを
期待してのいつもの深夜散歩で、暗がりに怪しい4人と
出会った…


…タケシは勇太の質問には答えないで、先手を打つべく

「おい、勇太、お前こそどこに行こうとしてたんだ」

と自分の方の疑いを突きつけたのだった。


 「いや・・・あの・・・」

と口ごもりながら、勇太は後ろを振り向いた。

 「言ってしまっていいのかな――」

とまさに相談を始めているといったようすなのだ。

 そんな勇太の胸を、タケシはポンとこぶしで叩き

ながら…

「おい、隠し事するんか」

と非難した。

 「わかったよ。いいよな――」

勇太は後ろのノンとブーに了解を求めようとした。

 ノンは、その端正な顔立ちに、やや苦笑いを見せながら

仕方がない…といった仕草で顔を縦に振った。


 ノンは昨年のミスター城南高校に選ばれたぐらいだから、

抜群の容姿である。

 それに比べて、ブーはややふとり気味で、頭が異常に

四角く、大きいのだ。

 容姿の点ではまさに対象的な二人が、どういうわけか

すごく気が合っていた。

 
 するとブーが、やにわに、しゃしゃり出て、持っていた

小型のカメラを見せた。

「カメラじゃないか。何のためそんなもの持って来たんだ」

とタケシは聞いた。

 ブーは口元に、ややまじめくさった笑いを作りながら、

 「二、三日前、父ちゃんがここを通っていたときのこと

  なんだけど――あの例の赤壁寺があるだろう。

   あそこのとこで、白い着物を来た妙に美しい女の人

 に会ったというんだよ。しかもその女の人はあの赤い壁の

 上をすーと飛んで行ったというんだ」

「それって、お前、父ちゃんが幽霊を見たと言うんか」

 「いや、父ちゃんもよく分からないが、白い着物が塀の上を

  飛んで行くように動いたというんだよ。だから一人では

 怖いから、みんなを誘って見に来たんだ」

「バーカ、お前人間止めろ」

 タケシはやや怒った口調になった。

 「いや、オレもそうは思ったんだけど、でも・・・話の出所が

  何と言ってもブーの父親だから、ちょっと確かめて見たい

  という気持ちになったんだ」

とノンが横から口を出して言い訳した。


 ノンとタケシは、何事にも余裕があり、似たところも多い

のだが、この点については、タケシは異常な信念を持って

いた。

 よく世間で幽霊話が持ち上がるが、タケシにとっては

どれもが、作り話であり、こんな非合理なことをまともに

信じる奴など、人間とは思わないということにしているの

である。

 ノンももちろん、どちらかと言えば、この種の人種に

属するのだが、でもこんな話を楽しんでやれ!という気持

の方が強い。

 だからブーがこんな話をしたとき、とにかく確かめてやれ

とついて来たのであった。


 それにしても・・・この寺町筋というのは、その名の通り

お寺ばかりが並んでいる通りなのだ。

 その中ほどに、赤壁寺という由緒ある寺がある。

 これがまたその名前の由来通りに寺の壁は赤く塗られ

ている。

 その真っ赤な壁は、連綿と続く寺の白壁の中で一際

異様に見えた。


 実は・・・この場所で戦国時代の頃、抗争があり、

多くの地付きのサムライたちが殺されたというのだ。

 そのときに傷ついたサムライたちの血に染まった

手形が、寺の白壁のあちこちに残された。

 その後、壁を何度、白壁に塗り替えても、その朱に

染まった手形が滲み出て・・・結局は塀自体を赤く塗って

しまったという言い伝えがある。

 このせいで、昔から夜中にこの道筋を通ると、苦し

そうに人の忍びなく声が聞こえたり、幽霊が出るという

噂を、タケシたちは小さい時から聞かされていたのだ。

小説の金曜日 第一章③ 赤い壁の上を
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Posted by リトルアメリカ at 10:30│Comments(0)リトルアメリカがんばれ小説子育て
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