2016年01月13日
“うらうら” のこと ⑤ ～絶妙のタイミング～
他の生徒に、「どうした彼は？今日も休んでるじゃないの？」と聞くと、
みんなは、にやにやしながら、「山登りすると言ってましたよ」と言うの
です。
何となく、彼らの言い方には、奥歯にものをはさんだといった雰囲気が
あります。「これはなにかあるな」と直感しました。
Q先生も心配して、彼に電話しますが、全然応答しません。
わざと電話にでないようにしているのです。
Q先生は「今は電話に出たくないのだろう。こんな時はそうっとしている
方がいい」・・・そう思ってそのままにしておこうと思ったのです。
しかし、周囲の生徒の方が、「いや、彼は何かある」と心配するのです。
みんなが心配顔になり、どうにかして彼に連絡する方がないのだろうかと
言い始めたのです。
そして、友だちの一人が彼の家に連絡をつけて、ようやく彼と連絡が
とれたのです。
これは、彼が日ごろから、友人たちの中で、人気があった、要するに
友達から愛されていたということだと思います。
いつもの彼の誠実な態度が多くの友を引き付けていたのでしょう。
とにかく、彼はようやくもう一度出てくることになりました。
「家で何かあってるの」 Q先生が心配して尋ねるのですが、
「うん、まー」と言ってあまり答えようとはしません。
もちろん、聞くまでもないことですが、彼は自分の成績が上がらない
ことに憤りを覚えているのです。
今まで、じっと辛抱して、中学生と机を並べ、勉強してきたのに、
未だに彼らには追い付かなくて、一体自分は何なのだ。
こんな思いが彼の心にどっしりと覆いかぶさって、振り払っても、
振り払っても、その重みから抜け出すことができなかったのです。
ただ、彼は初めての経験だから、このようなことに悩んでいるので
しょうが、いったん勉強を始めた生徒なら、一度は経験するはずのこと
です。
誰も何のつまずきもなく、成績が上がって行ったということは
ありません。
勉強しても勉強しても成績が上がらないという時期は必ずあります。
その時期が長いか、短いかは、それまでに何らかの勉強をした
経験のある人なら、比較的短いこともありますが、一度も勉強机に
向かった経験のない人は、成績が上がるまでには、長い長いトンネルを
抜けて行かなくてはならないことが多いのです。
そのトンネルはあまりに長すぎて、多くの生徒が途中で、こんなにまで
勉強しているのにどうして成績は伸びないのかと挫折していくのです。
しかし、一度挫折してしまえば、決して二度とチャンスはなくなります。
人間が成功するかどうかは、この挫折のなかで如何に耐えていくのか。
苦しい中を涙を流しながらでも、努力を続けることができるのかどうかに
かかっています。
彼は今まで耐えてきたその糸が、ピンと切れてしまったのでしょう。
そうなるともうどうでもいいやという気持ちになります。
そんなときふと「山でも登ってみようか」という気分になったとしても、
不思議ではありません。
「勉強など、自分には向かないのだ。やめてしまえ」
こんなふうに彼が思い始めていたのでしょう。
ちょうどそのタイミングで、友人たちが電話をしたのです。
おそらく、このタイミングは絶妙だったのだと思います。
その時期は・・・彼にとっても、進むのか、退くのかと苦悩しつつ、
そろそろ結論を出さなければならないと感じていた時期だったので
しょう。
そんなときに友達から誘いがあったのです。
だから・・・その誘いに乗ってみようと、彼は思いなおして、勉強しよう
という気持ちになってのだと思います。
そしてまた、ちょうどそのころ、Q先生も彼の母親と連絡がとれました。
「本人はあまりしゃべりたがりませんが、本当は悩んでいるんだと思い
ます。父親とも意見が衝突して、腹を立てて、家を飛び出したりしてい
ますが、最近はようやく決心がついたのかもしれません」
Q先生はこの言葉を聞いて、今がまったくの好機だ。
この時期を逃してはならないと、彼を呼んで勉強の方針を明確にする
ことにしました。
リトルアメリカ教育センター 中津校
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みんなは、にやにやしながら、「山登りすると言ってましたよ」と言うの
です。
何となく、彼らの言い方には、奥歯にものをはさんだといった雰囲気が
あります。「これはなにかあるな」と直感しました。
Q先生も心配して、彼に電話しますが、全然応答しません。
わざと電話にでないようにしているのです。
Q先生は「今は電話に出たくないのだろう。こんな時はそうっとしている
方がいい」・・・そう思ってそのままにしておこうと思ったのです。
しかし、周囲の生徒の方が、「いや、彼は何かある」と心配するのです。
みんなが心配顔になり、どうにかして彼に連絡する方がないのだろうかと
言い始めたのです。
そして、友だちの一人が彼の家に連絡をつけて、ようやく彼と連絡が
とれたのです。
これは、彼が日ごろから、友人たちの中で、人気があった、要するに
友達から愛されていたということだと思います。
いつもの彼の誠実な態度が多くの友を引き付けていたのでしょう。
とにかく、彼はようやくもう一度出てくることになりました。
「家で何かあってるの」 Q先生が心配して尋ねるのですが、
「うん、まー」と言ってあまり答えようとはしません。
もちろん、聞くまでもないことですが、彼は自分の成績が上がらない
ことに憤りを覚えているのです。
今まで、じっと辛抱して、中学生と机を並べ、勉強してきたのに、
未だに彼らには追い付かなくて、一体自分は何なのだ。
こんな思いが彼の心にどっしりと覆いかぶさって、振り払っても、
振り払っても、その重みから抜け出すことができなかったのです。
ただ、彼は初めての経験だから、このようなことに悩んでいるので
しょうが、いったん勉強を始めた生徒なら、一度は経験するはずのこと
です。
誰も何のつまずきもなく、成績が上がって行ったということは
ありません。
勉強しても勉強しても成績が上がらないという時期は必ずあります。
その時期が長いか、短いかは、それまでに何らかの勉強をした
経験のある人なら、比較的短いこともありますが、一度も勉強机に
向かった経験のない人は、成績が上がるまでには、長い長いトンネルを
抜けて行かなくてはならないことが多いのです。
そのトンネルはあまりに長すぎて、多くの生徒が途中で、こんなにまで
勉強しているのにどうして成績は伸びないのかと挫折していくのです。
しかし、一度挫折してしまえば、決して二度とチャンスはなくなります。
人間が成功するかどうかは、この挫折のなかで如何に耐えていくのか。
苦しい中を涙を流しながらでも、努力を続けることができるのかどうかに
かかっています。
彼は今まで耐えてきたその糸が、ピンと切れてしまったのでしょう。
そうなるともうどうでもいいやという気持ちになります。
そんなときふと「山でも登ってみようか」という気分になったとしても、
不思議ではありません。
「勉強など、自分には向かないのだ。やめてしまえ」
こんなふうに彼が思い始めていたのでしょう。
ちょうどそのタイミングで、友人たちが電話をしたのです。
おそらく、このタイミングは絶妙だったのだと思います。
その時期は・・・彼にとっても、進むのか、退くのかと苦悩しつつ、
そろそろ結論を出さなければならないと感じていた時期だったので
しょう。
そんなときに友達から誘いがあったのです。
だから・・・その誘いに乗ってみようと、彼は思いなおして、勉強しよう
という気持ちになってのだと思います。
そしてまた、ちょうどそのころ、Q先生も彼の母親と連絡がとれました。
「本人はあまりしゃべりたがりませんが、本当は悩んでいるんだと思い
ます。父親とも意見が衝突して、腹を立てて、家を飛び出したりしてい
ますが、最近はようやく決心がついたのかもしれません」
Q先生はこの言葉を聞いて、今がまったくの好機だ。
この時期を逃してはならないと、彼を呼んで勉強の方針を明確にする
ことにしました。
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